REPORT 06 / REGIONAL & TOURISM

地方創生・観光との連携
サウナツーリズムと遊休地活用

サウナは今、観光と地方創生の文脈で最も注目されるコンテンツの一つです。本ページでは、サウナツーリズムの需要動向、自治体との官民連携スキーム、遊休地・遊休施設を活用した開発の類型、そして地域展開に伴う課題を整理し、地域資源とサウナ施設開発を結び付ける際の実務的な視点を提供します。

サウナツーリズムの広がり

サウナを主目的とした旅行、いわゆるサウナツーリズムは、若年層を中心に定着しつつあります。湖に飛び込める北欧式のロケーション、地元食材を使ったサウナ飯、地域の温泉との組み合わせなど、「その土地でしか味わえないサウナ体験」が旅行動機となり、平日の宿泊需要や閑散期の集客に寄与する事例が各地で報告されています。サウナ愛好家のコミュニティはSNSでの発信力が高く、広告費をかけずに認知が広がる点も、観光事業者にとっての魅力です。

国内では「サウナのまち」を掲げる自治体が複数現れ、地域を挙げたイベント開催や施設誘致が行われています。フィンランドの湖水地方のように、サウナが地域ブランドの中核となる事例が国内でも生まれつつあります。

需要の特徴は、滞在時間が長く客単価が高いことです。サウナ目的の旅行者は入浴だけでなく宿泊・飲食・移動・物販まで地域内で消費するため、1人あたりの地域内消費額は日帰り温浴客の数倍に達すると見られています。また訪日外国人の間でも日本式サウナと自然環境の組み合わせへの関心が高まっており、インバウンド観光の文脈でもサウナは有望なコンテンツと位置付けられています。

サウナツーリズムの定着を裏付けるのが、リピート行動です。気に入った施設を年に複数回訪れる巡礼型の消費行動が観察されており、宿泊・交通を含む消費の裾野が広いことから、観光関連事業者との連携余地は大きいと言えます。旅行会社によるサウナ特化ツアーや、交通事業者の企画商品など、送客側のメニュー化も進んでいます。

経済効果の面では、サウナ関連の観光消費が宿泊・飲食・交通へ波及する乗数効果に注目が集まっています。サウナ目的来訪者の1人あたり消費額は日帰り温浴客の3〜5倍に達するとの試算もあり、閑散期の平日需要を生み出す効果と合わせて、観光戦略上の優先度が高まっています。

自治体との官民連携スキーム

自治体側もサウナを地域活性化の手段として位置付け始めています。代表的なスキームは、第一に公有地・公共施設の活用で、都市公園法に基づく公募設置管理制度(Park-PFI)や、廃校・閉鎖した保養施設のサウナ施設への転用が挙げられます。第二に、観光振興・地方創生関連の補助金・交付金による開業支援、第三に、地域事業者と組んだ実証イベント(期間限定のテントサウナフェス等)から常設化へ進む段階的な連携です。

官民連携で用いられる主な枠組み

  • 公募設置管理制度(Park-PFI)による都市公園内のサウナ・温浴施設設置
  • 廃校・遊休公共施設の利活用公募(サウナ付き宿泊・交流施設への転用)
  • 地方創生推進交付金・観光庁関連事業を活用した開業・実証支援
  • 河川・湖沼の水面利用に関する占用許可と社会実験制度
  • 地域商社・DMOとの共同プロモーション

事業者側の視点では、公募型案件は賃料条件が民間相場より有利な場合が多い一方、事業計画の公共性・継続性が審査されるため、地域雇用や地元調達を組み込んだ計画づくりが採択の鍵となります。行政手続きの窓口が複数にまたがる(公園・河川・保健所・消防)ことも多く、自治体側の伴走体制の有無が事業スピードを左右します。

官民連携を成功させる要点は、行政側の目的(交流人口の拡大・遊休資産の解消・地域ブランド向上)と事業者側の収益計画を、スキーム設計の段階で擦り合わせることです。賃料や補助の条件が良くても、公共性への配慮から営業の自由度が制約される場合があり、収支シミュレーションには運営上の制約条件を織り込む必要があります。行政案件の情報は自治体の公募情報や地域金融機関経由で流通することが多く、地域との接点づくりが案件獲得の第一歩となります。

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遊休地・遊休施設の活用類型

アウトドアサウナは、収益化が難しかった遊休資産に新たな用途を与える手段として注目されています。活用類型は大きく4つに整理できます。①湖畔・河畔・海辺の未利用地にバレルサウナと水風呂を設置する「ウォーターフロント型」、②森林・キャンプ場に併設する「フォレスト型」、③廃校・廃旅館・古民家を改修する「リノベーション型」、④ビルの屋上や駐車場を使う「都市インフィル型」です。それぞれ必要な投資規模とリスクが異なり、給排水・電源・アクセス道路などのインフラ整備費が事業性を左右します。

類型の選択では、土地の制約条件から発想するのではなく、想定する顧客体験から逆算して土地の適性を評価する方が、開業後の集客力に直結します。リノベーション型では、既存建物の給排水・電気設備の残存価値が事業性を左右します。廃旅館は浴場設備が残るため転用に向く一方、耐震・消防の改修費が想定を超えるケースも多く、建物調査に基づく改修費の精査が不可欠です。廃校は敷地の広さと地域の象徴性が魅力ですが、用途変更の手続きと行政調整に時間を要します。

特にウォーターフロント型は天然水風呂という代替困難な価値を持ち、サウナツーリズムの目的地となる潜在力が最も高い類型です。ただし河川法・自然公園法等の規制、水質・安全管理、地元漁業・利水者との調整が必要であり、行政と地域の合意形成に時間を要します。遊休地活用の具体的な進め方は、ブログ記事「遊休地を収益化するアウトドアサウナ開発の実務」でも詳しく報告しています。

地域展開のパターン分析

パターン 主体 投資規模 成功の鍵
観光地の宿泊施設併設 旅館・ホテル 500万〜3,000万円 宿泊単価向上と閑散期集客
公有地活用(Park-PFI等) 民間事業者+自治体 3,000万〜数億円 公共性と収益性の両立
廃校・遊休施設転用 地域企業・移住起業家 2,000万〜1億円 改修費の見極めと補助活用
イベント型から常設化 地域コミュニティ 100万〜1,000万円 実証で需要を確認して段階投資

表1: 地域におけるサウナ開発の主なパターン(当サイト整理)

共通する成功要因は、地域資源(水・森・食・温泉)との組み合わせによる体験の固有化と、段階投資による需要検証です。テントサウナによる期間限定営業で需要と運営課題を確認してからバレルサウナや建築物への投資に進む二段階方式は、初期リスクを抑える定石として広がっています。

成功事例に共通するのは、サウナ体験の中心に「その土地の水」を置いていることです。湧水・雪解け水・海といった水の物語性は模倣が難しい差別化資産となります。また、初年度から黒字化を狙う計画よりも、2〜3年で地域の目的地として認知を積み上げる中期計画の方が持続性が高いことが、各地の事例から示唆されています。地域金融機関・観光協会・地元事業者を巻き込んだ推進体制は、集客と人材確保の両面で効果を発揮します。

地域展開の課題

課題の第一は運営人材です。地方では清掃・監視・熱波師(アウフギーサー)などの人材確保が難しく、無人運営システムの導入や地域おこし協力隊との連携で補う例が見られます。第二に季節変動で、冬季の凍結・積雪対策や、夏季の水温上昇への対応が稼働率を左右します。第三に、ブーム依存への懸念です。単発の話題性で終わらせず、リピートを生む体験品質と、地域の食・宿泊と連動した滞在プログラムに落とし込めるかが、持続性の分水嶺となります。

また、自然環境を利用する事業である以上、環境負荷への配慮は事業継続の条件です。排水の処理、薪の調達における森林資源への配慮、ごみ・騒音の管理などは地域の信頼を左右します。環境配慮を発信要素として位置付け、地域材の活用や環境負荷の開示に取り組む施設も現れています。

それでも、遊休資産の収益化、関係人口の創出、閑散期需要の平準化という三つの効果を同時に狙える開発テーマは多くなく、サウナと地域観光の連携は今後も拡大が見込まれています。市場全体の将来像は将来展望で整理します。

遊休地の活用は、不動産の含み損を体験価値へ転換する取り組みでもあります。サウナはその転換装置として、投資規模・話題性・地域との親和性のバランスに優れており、地方創生と民間投資の接点として今後も案件の増加が見込まれます。

事業者にとっての実務的な示唆は、地域連携を「補助金獲得の手段」ではなく「模倣困難な立地資産の獲得」として捉えることです。水辺・森林・温泉地などの一等地は行政や地域の信頼なしには確保できず、その信頼こそが後発に対する参入障壁となります。

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