REPORT 01 / MARKET OVERVIEW

市場概況
サウナ人口・施設数・温浴市場の動向

サウナ施設開発への参入を検討する際、最初に押さえるべきは需要と供給の全体像です。本ページでは、サウナ人口の推移、国内施設数の内訳、温浴市場の規模と構造、そして成長を支える消費トレンドと供給過剰リスクを、2025〜2026年時点の推計値をもとに整理します。

サウナ人口の推移と利用者層の変化

国内でサウナを月1回以上利用する層は、2025年時点で約1,500万人規模に達したと推計されています。2019年前後に始まった第3次サウナブーム以前は、サウナ利用の中心が40〜60代の男性に偏っていましたが、現在は20〜30代の若年層と女性利用者の増加が市場拡大の主因と見られています。特に女性のサウナ利用率はこの5年間で2倍以上に伸びたとの調査が複数あり、女性専用時間帯や個室型を備えた温浴施設の集客力を押し上げています。

サウナ人口の内訳では、平日夜と週末に利用が集中する会社員層が中核ですが、リモートワークの定着により平日日中の利用も緩やかに増えています。年齢層の広がりに加えて、利用動機も「疲労回復」「睡眠改善」「思考の整理」など多様化しており、単なる入浴ではなくコンディショニング手段としての位置付けが定着しつつあります。この動機の多様化は、料金プランやサービス設計の幅を広げる要因となっています。

利用頻度の分布を見ると、月4回以上利用するヘビー層は300万人前後と推計され、この層が施設売上の過半を支える構造です。ヘビー層は水風呂の温度、ロウリュやアウフグースの実施頻度、外気浴環境といった体験品質への感度が高く、サウナ経営における設備投資の優先順位を左右する存在となっています。一方、年数回のライト層は約2,500万人と裾野が広く、施設の快適性や清潔感、料金の分かりやすさを重視する傾向があります。

地域別に見ると、サウナ利用人口は三大都市圏に約6割が集中する一方、人口あたりの施設数は北海道や北陸などの寒冷地で高い水準にあります。都市圏では需要に対して質の高い供給がなお不足しているとの見方があり、特に女性が利用しやすい施設や深夜早朝に利用できる施設は競争が比較的緩やかです。参入検討においては、全国平均の数値だけでなく、商圏単位での需給ギャップを見極めることが重要になります。

約1,500万人
月1回以上のサウナ利用人口
2025年時点・推計
約300万人
月4回以上のヘビーユーザー層
売上貢献度が最も高い層
2倍以上
直近5年の女性利用率の伸び
複数調査からの推定

施設数と供給の内訳

サウナを備える国内施設は、温浴施設・宿泊施設・専門施設を合わせて約13,000施設と推計されています。内訳としては、スーパー銭湯や日帰り温泉などの大型温浴施設が最も多く、次いでビジネスホテルの大浴場サウナ、カプセルホテル併設型、サウナ専門施設、そして近年急増した貸切個室サウナとアウトドアサウナが続きます。

図1: サウナ供給の内訳(2025年時点・当サイト推計)

注目すべきは構成比の変化です。従来型の銭湯は後継者不足と設備老朽化により年率数パーセントの減少が続く一方、貸切個室サウナは2021年以降の5年間で10倍以上に増えたと見られています。またバレルサウナやテントサウナを核とするアウトドアサウナ拠点は、グランピング施設やキャンプ場への併設という形で全国に広がり、既存の温浴市場統計では捕捉しきれない供給として拡大しています。つまりサウナ施設開発の主戦場は、大型温浴施設の新設から、小規模・分散型の開発へと明確に移行しています。

供給の質的な変化も進んでいます。既存の大型施設ではサウナ室の増設や熱波イベントの定例化など「サウナ強化型リニューアル」が相次ぎ、施設数の伸び以上にサウナ体験の供給量は拡大していると見られています。また、ホテル客室へのプライベートサウナ導入、フィットネスクラブへの併設など、専業施設以外への組み込み型供給も増えており、業種の垣根を越えた競争が始まりつつあります。

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温浴市場全体の規模と構造

サウナを含む温浴・入浴関連市場は、施設売上ベースで約7,000億円規模と推計されています。このうちサウナが集客の主目的となっている売上は2,000億円前後と見られ、残りは温泉・スーパー銭湯等の入浴需要が占めます。さらに設備・建設投資、サウナグッズ・ウェア、メディア・イベントなどの周辺市場を加えると、サウナ関連の経済圏は年間3,000億円を超える規模に達するとの試算もあります。

セグメント 市場規模(推計) 直近のトレンド
温浴施設売上(サウナ含む) 約7,000億円 微増。サウナ強化型施設が牽引
うちサウナ主目的売上 約2,000億円 年率5〜10%成長と推計
サウナ設備・建設投資 約500億円 個室型・アウトドア型が拡大
グッズ・ウェア・周辺消費 約600億円 ギフト・法人需要が伸長

表1: 温浴・サウナ関連市場の構造(2025年時点・当サイト推計)

市場構造の特徴は、装置産業である大型温浴施設と、労働集約度の低い小規模個室サウナが同一市場内に併存している点です。前者は初期投資10億円超・損益分岐までの期間が長い一方、後者は数千万円規模の投資で開業でき、不動産事業者や個人投資家の参入が続いています。この投資規模の二極化が、後述する開発類型の多様化を生み出しています。

収益性の観点では、サウナ主目的売上の成長率が温浴市場全体を上回っている点が重要です。入浴料に加えて、レンタルウェア、館内飲食、物販、イベント課金など客単価を構成する要素が多層化しており、サウナ利用者1人あたりの施設内消費額は一般入浴客より3〜5割高いとの推計もあります。この単価差こそが、既存温浴施設がサウナ投資を優先する経済合理性の根拠となっています。

成長ドライバーと消費トレンド

市場拡大を支える要因は複合的です。第一に、ウェルネス市場全体の拡大です。睡眠の質やストレスケアへの支出は増加傾向にあり、サウナは「ととのう」という体験価値を通じて心身のリカバリー消費の受け皿となっています。第二に、企業の福利厚生やチームビルディング用途での法人利用が広がり、貸切型施設の平日稼働を下支えしています。第三に、訪日外国人によるサウナ体験需要です。日本式の水風呂・外気浴文化やアウフグースイベントは観光コンテンツとしての発信力を持ち、都市部施設のインバウンド比率は上昇傾向にあると見られています。

  • ウェルネス消費の定着: リカバリー・ストレスケア目的の定期利用が拡大
  • 法人・団体利用: 福利厚生、オフサイトミーティングでの貸切需要
  • インバウンド: 日本独自のサウナ文化を目的とする訪日客の増加
  • メディア露出: ドラマ・SNS・専門メディアによる継続的な話題化
  • 設備の低価格化: バレルサウナ等の普及による参入障壁の低下

これらのドライバーは相互に補強し合う関係にあります。メディア露出がライト層の初回利用を生み、体験品質の高い施設がその一部をヘビー層へ育て、ヘビー層の発信がさらに新規層を呼び込む循環です。事業者の視点では、この循環のどこを取り込む施設なのかを明確にすることが、開発コンセプトの出発点となります。また、健康効果に関する国内外の研究発表が増えていることも、サウナ利用の習慣化を後押しする長期要因と見られています。

市場の課題と供給過剰リスク

一方で、参入検討時に直視すべきリスクも明確になりつつあります。最大の論点は都市部における個室サウナの供給過剰です。主要都市の駅近立地では同業態の出店が集中し、価格競争と稼働率低下の兆候が一部エリアで報告されています。また、水道光熱費の高止まりは温浴施設全体の収益を圧迫しており、省エネ型ストーブへの更新や料金改定が経営課題となっています。

人材面の制約も顕在化しています。施設運営の要となる支配人クラスの人材、熱波師、水質・衛生管理の知見を持つスタッフは業界全体で不足しており、採用・育成コストは上昇傾向にあります。多店舗展開を計画する事業者にとっては、標準化されたオペレーションと研修体制の整備が、出店速度を左右する隠れたボトルネックとなっています。

加えて、ブームの反動リスクも無視できません。サウナ利用が一過性の流行で終わるのか、フィットネスジムのように生活習慣として定着するのかは、施設側の体験品質と安全管理にかかっています。市場データ上は、ヘビー層の利用頻度が安定していることから習慣化の傾向が優勢と見られていますが、開発計画では保守的な需要シナリオを併用することが推奨されます。詳細な業態別の分析は施設開発の類型で、収益面の検証は運営ビジネスモデルで解説します。

総じて、市場はブームの熱量に支えられた第一局面から、習慣化した需要と多様化した供給が競い合う第二局面へ移行しています。市場全体の成長は続くものの、個々の施設の成否は商圏選定と体験品質への投資判断に大きく依存します。次章以降では、開発類型ごとの特性と、法規制・収支・設備調達の実務を順に見ていきます。

本章の要点

  • 月1回以上のサウナ人口は約1,500万人。若年層・女性の増加が市場を拡大
  • 施設供給は約13,000施設。個室型・アウトドア型など小規模開発へシフト
  • 温浴市場は約7,000億円。サウナ主目的売上は年率5〜10%成長と推計
  • 都市部個室サウナの供給過剰と水道光熱費の上昇が主要リスク
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