ニュースの概要
福島県郡山市の玄関口、JR郡山駅前通りに、個室を貸し切って使うプライベートサウナ「郡山ステーションサウナ」が新しくオープンした。この施設はサウナ単体で終わらず、エステや整体、スパイスを効かせた料理までを一か所で楽しめる複合型の癒やし空間として打ち出している点が大きな特徴だ。駅から歩いてすぐという都市型の立地を生かし、地元福島県内の利用者だけでなく、県外からわざわざ足を運ぶサウナ愛好家の来訪も見込んでいるという。限られた敷地面積でも成立する小規模・高単価型の運営モデルであり、地方都市におけるサウナ施設開発の新しい選択肢を示す事例といえる。
引用元: 郡山駅前に完全個室のプライベートサウナ「郡山ステーションサウナ」誕生(PR TIMES)
分析・見解
駅前という狭い立地を個室で逆手に取る発想
郡山駅前通りは地価も賃料も高く、大型のスーパー銭湯や広い水風呂を備えたサウナ施設を作るには向かない立地だ。しかし今回のように個室を貸し切る形式なら、延床面積が小さくても成立する。1部屋あたりの稼働率と客単価さえ確保できれば、郊外に広い土地を借りて大型施設を作るより初期投資を抑えられる。坪あたりの売上で考えれば、個室型は大浴場型のスーパー銭湯よりも効率よく稼げる余地がある。駅前という好立地を、広さではなく部屋の密度で生かした設計だと言える。
サウナ・エステ・整体・食事を束ねた複合化の狙い
サウナ単体の施設は、温かい部屋と水風呂を交互に使う体験で終わりやすく、滞在時間も客単価も頭打ちになりやすい。そこにエステや整体を組み合わせれば、ととのった後の体を専門家に預けるという一連の流れが生まれ、滞在時間は自然と延びる。さらにスパイス料理を提供することで、発汗で失った塩分や水分の補給という体の欲求と、食事という楽しみを同時に満たせる。ホテルが宿泊に朝食やスパを足して単価を上げるのと同じ発想を、サウナという一回数千円の商材に持ち込んだとも言える。単品の付け足しではなく、サウナ後の時間の流れに沿ってサービスを並べている点が、単なるついで商売と違うところだ。
貸切制が持つ強みと、客数を増やしにくいという弱み
完全個室・貸切制は、他人と裸で過ごす気まずさをなくし、カップルや女性同士、接待目的の利用者を取り込みやすい。混雑時間帯でも隣の客の声が気になるといった不満が出ないのも強みだ。一方で、大浴場型と違い同時に受け入れられる人数には上限があり、1組あたりの滞在時間が長いほど回転数は落ちる。売上は客単価と回転数と部屋数のかけ算で決まるため、エステや整体で単価を底上げする今回の設計は、回転数の制約を単価で補う合理的な選択と見ることができる。裏を返せば、この型のサウナは数をさばく商売ではなく、一組からどれだけ稼ぐかの商売だという前提に立たないと採算が合わない。
地方都市型サウナ開発の一つの型として見るべき理由
サウナブームはここ数年、都市部の大型複合温浴施設や、キャンプ場併設の屋外サウナといった両極端な形で語られがちだった。郡山ステーションサウナのような駅前・小規模・高単価の型は、その中間を埋める存在だ。人口30万人規模の地方都市では、大型投資に見合う集客を見込みにくい一方、駅前の空きテナントは出やすい。小さく始めて複合サービスで単価を稼ぐこのモデルは、同じ条件を抱える他の地方都市でも再現しやすい設計の考え方だと言える。
ビジネスへの影響
新規開業を検討する事業者がまず確認すべき数字
個室貸切型は小規模でも成立するとはいえ、採算ラインは部屋数と回転数と客単価のかけ算で決まる。郡山の事例のように整体やエステを併設するなら、サウナ単体より客単価を2〜3割上げられる可能性がある一方、施術者の人件費や予約管理の手間も増える。開業前には、サウナのみの価格設定と複合サービス込みの価格設定の両方で損益分岐点を試算し、どちらのモデルで初期投資を回収できるかを比べておく必要がある。
複合サービス導入で押さえるべき実務上の論点
エステや整体を自前で雇用するか、外部の施術者と業務委託契約を結ぶかで、固定費の重さが大きく変わる。開業初期で稼働率が読めない段階では、歩合制の業務委託から始め、稼働が安定してから正社員化する段階的な体制づくりが現実的だ。食事提供を伴う場合は飲食の営業許可が別途必要になるため、サウナの構造設備基準に加えて保健所への相談を早めに済ませておくことが、開業までの工期短縮につながる。
駅前立地を検討する際の賃料とアクセスの見極め方
駅前という立地は集客力がある一方、賃料負担も重い。郡山のように県外からの来訪を見込む設計にするなら、新幹線停車駅など広い範囲からのアクセスの良さが賃料負担を正当化できるかどうかが判断の分かれ目になる。単なる駅近というだけでなく、どこまでの商圏から客を呼べる立地かを事前に見極めることが、賃料に見合う売上を確保できるかどうかを左右する。駅前出店は一等地であるほど撤退時の原状回復費用も重くなる点まで含めて、長期の収支計画に織り込んでおきたい。