ニュースの概要
サウナ設計・開発を手がけるトナリゾートが、北海道で宿泊施設運営を行うダブルバケーションと資本業務提携を結んだ。舞台は観光地として知られる洞爺湖エリア。両社は湖畔の景観とプライベートサウナ、そして人手を介さない無人運営を組み合わせた新しい宿泊施設の開発に取り組む。トナリゾートが設計とIoT設備の実装までを担当し、完成後の現場運営はダブルバケーションに引き継ぐという役割分担が特徴で、今後は保有する土地や既存の空き物件を活用した横展開も検討されており、サウナブームを追い風にした地方発の宿泊投資モデルとして関係者の関心を集めている。
引用元: トナリゾート、北海道でプライベートサウナ付きヴィラ開発を推進(PR TIMES)
分析・見解
洞爺湖という立地が語る、観光地の入れ替わりという狙い
洞爺湖はかつて団体旅行の温泉地として栄えたが、近年は個人旅行やインバウンド需要の変化で稼働率の波が大きいエリアだ。そこにプライベートサウナ付きヴィラを持ち込む狙いは、既存の温泉旅館とは違う客層、つまり少人数で「ととのう」体験を求める層を新たに呼び込むことにある。湖畔という景観資源はすでに存在するため、追加投資をサウナ棟とヴィラの建築費に集中できる点も見逃せない。既存の温泉地に高単価な個室体験を重ねて客単価を引き上げる手法は近年各地で広がっており、洞爺湖の取り組みもその延長線上にあると見てよい。
無人運営が成り立つ背景にある人手不足という構造問題
北海道の宿泊業は冬季の除雪や広域からの通勤負担もあり、恒常的な人手不足に悩まされてきた。フロント常駐をやめてIoT(モノのインターネット=機器をネットにつなぐ仕組み)で鍵の受け渡しや室温管理を行う無人運営は、コスト削減策である以上に「人を配置できない立地でも営業を続けるための手段」という側面が強い。実際、キャンプ場やグランピング施設でも同様の無人チェックイン化が進んでおり、今回の提携はその流れをサウナという高単価商材に持ち込んだ点が新しい。人を増やすのではなく、人がいなくても回る仕組みを作るという発想の転換は、今後の地方観光業全体に広がっていく可能性がある。
設計会社と運営会社を分ける座組みは外食のフランチャイズに近い
トナリゾートが設計とIoT実装を担い、ダブルバケーションが運営を引き受けるという分業は、外食産業の本部と加盟店の関係に似ている。本部役のトナリゾートが標準化されたサウナヴィラの「型」を作り、土地を持つ地域の事業者がそれを導入して運営できれば、洞爺湖以外のエリアにも同じモデルを再現しやすくなる。空き別荘や遊休地を持つ地方の地主にとっては、自ら設計や設備選定をしなくても事業に参入できる点が魅力になるはずだ。今回は資本業務提携という形で両社が株式も持ち合う踏み込んだ関係を選んでおり、単なる技術供与よりも責任の共有が重い座組みになっている。
サウナの無人運営最大の壁は事故発生時に誰も現場にいないこと
一方で見落とせないのが安全管理だ。サウナは温度管理を誤ればやけどやヒートショック(急激な温度差による体調急変)につながる設備で、フロントが無人だと異常時の初動対応が遅れるリスクがある。IoTによる遠隔監視でどこまでカバーできるかが、このモデルの信頼性を左右する。今後、同種の物件が増えるほど、業界団体や自治体が無人サウナ施設向けの安全基準づくりを求める展開も考えられ、それまでは保険や緊急連絡体制の設計が個々の事業者の腕の見せどころになるだろう。
ビジネスへの影響
横展開を見据えるなら型への標準化投資を先に見極める
このモデルが広がる鍵は、トナリゾートが提供する設計・IoTパッケージがどこまで汎用化されているかにある。自社で土地や空き物件を持つ事業者は、個別に設計事務所へ発注するより、実績のある型を導入した方が開発期間とコストを読みやすい。導入を検討する際は、契約範囲が竣工までか、竣工後の設備保守まで含むのかを必ず確認したい。
運営受託側は無人化前提の保守体制をコストに織り込む
ダブルバケーションのように運営を引き受ける側にとって、無人運営は人件費を抑えられる反面、遠隔監視システムの保守費用や緊急時の駆けつけ体制を別途確保する必要がある。見た目の人件費削減だけで収益計算をすると、実際の運用コストを過小評価しかねない。
地方の遊休不動産オーナーには新しい出口が生まれる
洞爺湖以外でも湖畔や温泉地に空き別荘や未活用の土地を抱えるオーナーは多い。設計から運営までを外部に委ねられるこのモデルは、自ら宿泊業のノウハウを持たなくても資産を収益化できる選択肢として、地方の不動産オーナーが注目する価値がある。